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カルテは「証拠」だった。医療現場で32年、診療情報管理士として見てきたこと

カルテは「証拠」だった。医療現場で32年、診療情報管理士として見てきたこと

病院の医療事務の仕事を、32年続けてきました。32年の間にはいくつかの部署を経験しましたが、中でも印象に残っているのが、診療情報管理士として診療録管理の部署で働いていた時期です。その後、この病院を退職してから、まったく別の職場である調剤薬局の窓口で、パートとして1年4か月ほど働いていました(この薬局を退職した経緯は、こちらの記事にも書いています)。

今回は、病院で過ごした32年を振り返ってみます。中でもいちばん印象に残っている「紙カルテから電子カルテへの移行」を中心に、現場で感じてきたことをまとめてみます。

2014年ごろ、紙カルテが電子カルテに変わりました

私の勤務先では、2014年ごろに電子カルテへの移行がありました。それまで紙に手書きだった記録が、パソコンの画面の中に入っていく。医師にとっても、私たち事務側にとっても、働き方が大きく変わる出来事でした。

診療情報管理士として、私は移行後の電子カルテの操作を覚えるだけでなく、パソコン操作が苦手な医師に使い方を教える役目も担っていました。教える相手は、それだけではありません。他院から異動してきた新人の医師もいて、病院によって電子カルテのシステムも入力のルールも違うため、「当院ではこう入力してください」と一つひとつ伝える必要がありました。

まみぃ

お医者さんに操作を教えるというのは、事務の仕事のイメージとは少し違うかもしれませんが、当時の現場ではよくあることでした。

診察中、医師がパソコンばかり見ていると感じたら

電子カルテになってから、患者さんの立場では「診察中、医師がパソコンばかり見ている」と感じることがあるかもしれません。あの時間、医師は以前の記録を確認して患者さんの状態を把握したり、今日の診察の内容をその場で記録したりしています。

診察が終わったあとも、なかなか呼ばれずに待つことがあると思います。これも、処方や検査の指示をすべて入力する必要があるためで、内容によっては時間がかかることがあります。画面の向こうで、次の準備のための入力作業が進んでいる、ということが多いです。

まみぃ

待たされていると感じる時間の裏側には、こうした入力作業があることを知っていただけたらと思います。

電子化しても、紙のカルテは捨てられません

電子カルテに移行したあとも、それまでの紙のカルテを処分するわけにはいきませんでした。カルテには法律で決められた保管期間があるからです。厚生労働省の資料によると、診療録の保存期間は医師法で5年間と定められています。過去の履歴を確認する必要が出てきたときは、電子カルテだけでなく、保管してある紙のカルテを探し出すこともありました。

厚労省の資料には、紙のカルテをきちんとスキャンして電子化した場合は紙そのものの保存義務がなくなる、という考え方も示されています。ただし、記録の真正性を確保する観点から、法律で決められた期間を超えても紙を保存しておくことが望ましいともされていて、私が現場で感じていた「電子化しても紙は簡単には手放せない」という感覚と一致していました。

出典:診療録の保存年限に係る現行法令上の規定について(厚生労働省)

カルテは、ただの記録ではありませんでした

診療情報管理士としての仕事の中心は、カルテに記録の不備がないかを確認する作業でした。病名や実施した処置などが、すべて正しく記載されているか。抜けているところはないか。地味に思われるかもしれませんが、これがとても重要な仕事でした。

というのも、カルテに記載がなければ、それは「行われなかったこと」と同じ扱いになってしまうからです。診療の証拠としての役割を果たせなくなるだけでなく、診療報酬を算定する根拠もなくなってしまいます。「書いていないことは、やっていないことになる」——この考え方が、記録を大切にする理由そのものでした。

まみぃ

患者さんからは見えない部分ですが、カルテの一行一行に、こういう意味があるのだと感じながら仕事をしていました。

増えてきた「開示請求」という言葉

近年、印象に残っている変化のひとつが、カルテの開示請求が増えてきたことです。実は、患者さん自身にも、自分のカルテを見せてもらう権利があります。厚生労働省が定める「診療情報の提供等に関する指針」では、患者との信頼関係づくりや、患者の知る権利、自己決定権といった観点から、診療記録の開示を積極的に進めることが求められています。

出典:診療情報の提供等に関する指針(厚生労働省)

開示請求が増えるということは、それだけ記録がきちんとしているかを見られる機会が増えるということでもあります。記録に漏れがあれば、そこが問題になることもあるため、監査の仕事は以前にも増して慎重に行うようになりました。

おわりに

紙から電子へ、そして開示請求が当たり前になっていく中で、変わらなかったのは「記録を正確に残すことの大切さ」でした。32年間、その一行一行を確認し続けてきたことが、今の私の仕事の土台になっている気がします。

普段、病院にかかるときに意識することはないと思いますが、カルテの向こう側にはこういう仕事があった、ということを、記録として残しておきたいと思いました。

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